バイオベース材料を用いた新たなサプライチェーン構築-1
バイオエコノミーとは
バイオエコノミー概要
バイオエコノミー(Bioeconomy)とは、再生可能な生物資源(植物、動物、微生物など)を利用し、エネルギー、材料、食品、化学製品などの産業を発展させる経済の仕組みを指します。従来の化石資源に依存する経済から脱却し、自然環境への負荷を減らしながら経済活動を行うことを目指しています。
出所)神戸大学先端バイオ工学研究センター参照のもとSocial Bridge作成
具体的には、バイオテクノロジーや遺伝子工学、バイオマス(生物由来の資源)の利用技術などが発展することで、以下のような分野で活用されることが期待されています:
- 再生可能エネルギー: 石油や石炭などの化石燃料の代替として、バイオマスからのエネルギー生成(バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼルなど)を活用
- バイオプラスチック: 石油由来のプラスチックに代わる、植物由来のプラスチックが開発され、環境への影響を減らす取り組み
- バイオ医薬品: 生物資源を用いて医薬品を生産する技術が進化し、従来の化学合成薬に代わる新しい治療法を開発
- 持続可能な農業: 生物資源を効率的に利用し、環境への影響を最小限に抑える農業技術や、新しい作物を開発
バイオエコノミーに関する各国政府の対応
日本を含む各国政府において、バイオテクノロジーやバイオマスを用いて様々な課題解決と持続可能な経済成長を目指し、バイオエコノミーに関する国家戦略を策定し、投資やルール形成などの取組を遂行しています。以下が、主な各国の政策となります。
表1 バイオエコノミーに関する各国政策
国 | 政策概要 |
日本 | 2019 年に「2030 年に世界最先端のバイオエコノミー1社会を実現」を目 標に掲げる「バイオ戦略」を策定。2021年に「バイオエコノミー戦略」を策定、主要分野を以下と定め、取組みを推進。バイオモノづくり・バイオ由来製品:各産業のバイオプロセス転換の推進、未利用資源の活用によ る環境負荷低減やサプライチェーンの強靭性向上農林水産業:持続可能な食料供給産業の活性化、木材活用大型建 築の普及によるCO₂排出削減・花粉症対策への貢献バイオ医薬品・再生医療などのヘルスケア:日本発のバイオ医薬品等のグローバル展開、 医療とヘルスケア産業が連携した健康寿命延伸 |
EU | 欧州では、特にバイ オエコノミーとサーキュラーエコノミーの考えを統合した循環型バイオエコノミーの構築を目指す。2023 年 12 月「欧州再生可能エネルギー指令」の改定をはじめ、規制戦略を積極的に展開。さらに、各国の地域資源を活用したバイオエコノミーの促進を目指し、地域間の協力を強化(例:バイオプラスチックやバイオ化学製品の製造において、高い規制基準と環境負荷削減を求めており、企業の競争力向上と環境保護の両立を目指す) |
アメリカ | 2022年9月「持続可能な安全でセキュアな米国のバイオエコノミーのために進化するバイオ技術/バイオ製造に関する大統領令」を発令。保健医療、気候変動、エネルギー、食品安全、農業、サプライチェーンのレジリエンス、国家・経済安全保障における革新的なソリューションに向けて、政府全体のアプローチを調整しながら、バイオ技術/バイオ製造業を進化させることを目指す。広大な農地とバイオテクノロジーの研究開発の先進性を活かし、バイオエネルギー市場の拡大に向けた政策支援を行う。特にエタノールやバイオディーゼルの商業化が進んでおり、持続可能なエネルギー源として重要な位置に。 |
中国 | 2021年「第14次5カ年(2021~2025年)規画バイオエコノミー発展規画の通知」を発表、ライフサイエンスやバイオテクノロジーを活用したバイオエコノミーの発展方針を制定。重点分野として、医療・ヘルスケア、食品、グリーン・低炭素排出、バイオセーフティー。GDPに占めるバイオエコノミーの比率増加や、ライフサイエンスの基礎研究費やバイオ産業の研究開発費の大幅な増加、突発的な感染症などへの対応メカニズムの構築、先端技術・人材・資本といったイノベーションに関わる要素の流動性向上などを目指す国家主導での強力な政策支援とインフラ整備が特徴的であり、バイオエコノミー関連の研究開発や技術の商業化を政府が大規模に支援。 |
シンガポール | バイオエコノミー戦略の一環として、「ライフサイエンス産業の強化」を掲げ、特にバイオ医薬品とバイオテクノロジー産業に注力。シンガポール経済開発庁では、「テクノロジー」「マンパワー」「インフラ」「ビジネス環境」の4つの戦略を柱に、バイオ医薬品企業の製造施設の誘致も。シンガポール食品庁(SFA)は食料自給率を2030年までに30%へ(栄養ベース)引き上げる目標を設定。昆虫食と同様、植物代替肉、細胞培養肉なども新たな代替タンパク源と位置付け。 |