資源循環の車窓から vol.2〜Social Bridgeによる神戸での取り組み:金属〜

Social Bridgeが取り組む資源循環

Social Bridge株式会社が運営するマツザワでは、1953年(昭和28年)神戸での創業以来、地元に根ざしながらおよそ70年間事業をおこなっています。神戸市指定の資源集団回収業者として実施している資源回収にはじまり、不用品回収、金属スクラップの高価買取、古物の買取(有価物処理)、産業廃棄物処理代行など、さまざまな取り組みから資源循環文化を創造しています。

資源循環の車窓から vol.2 〜金属〜

前回の「古紙」に続き、今回はSocial Bridge・マツザワが取り組む金属の回収について、ご紹介します。

日本の金属リサイクルの歴史

日本でのリサイクルを語るにあたって、その歴史に触れずにはいられません...!古紙と同じく、「循環型社会」を形成していた江戸時代まで時を遡ります。

1. 江戸時代(1603〜1868年)

日本のリサイクル文化の源流は、江戸時代にさかのぼります。当時、都市部では「屑屋(くずや)」と呼ばれる回収業者が金属を含むさまざまな廃材を集め、鍛冶職人や鋳物師(いものし)によって再利用されていました。特に金属類は貴重で、壊れた釘や刃物の破片も回収され、鍛冶職人によって新しい製品に生まれ変わっていました。江戸時代は、まさに「持続可能な社会」の先駆けだったと言えるでしょう。

  • 日常的に行われていた金属の再利用
    • 釘・刀剣の再利用:壊れたものを鍛冶屋で修理・再生
    • 銅・鉄の再鋳造:寺の鐘、鍋、農具などを溶かして再利用
    • 金・銀のリサイクル:貨幣鋳造のため、古い貨幣を溶かして再利用
  • リサイクルの担い手「屑屋(くずや)」
    • 屑屋(くずや)は現代でいう「廃品回収業者」に近い存在であり、町を回って金属くずを集め、職人に売ってい
    •  主に回収していたものとして以下がある
  • 金属類(釘、包丁、鍋、釜、鎖など):鍛冶職人が溶かして再利用
  • 紙(古本、使い終わった和紙など):紙漉き職人が再生紙に
  • 布(古着、ボロ布):ふとんや雑巾にリメイク
  • 陶器の破片:接着して再利用、または粉砕して土に戻す
  • 屑屋のなかには「買い取り専門」と「修理もする屑屋」がいた。修理できるものはその場で直して再販することもあり、現代のリサイクルショップのような機能も果たす

2. 明治・大正時代(1868〜1926年)

明治時代に入ると、産業革命の影響を受け、日本でも鉄鋼生産が本格化しました。近代製鉄業の発展に伴い、鉄スクラップの需要が増加し、また造船・鉄道産業の発展により、鉄くずの回収も活発化していきました。さらに、日露戦争・第一次世界大戦の影響で金属資源の確保が、国家政策としても重要視され始めます。

3. 昭和(1926〜1989年)

戦時中になると軍需品の製造のために金属資源が不足し、政府は「金属供出令」を発令しました。寺院の鐘や鉄柵、家庭の鍋や釜までが回収され、武器や軍艦の材料として使われました。戦後、日本の復興を支えたのが鉄スクラップのリサイクルです。廃墟となった建物や機械の金属が回収され、新たな鉄鋼製品へと生まれ変わりました。1950年代から急速に進んだ高度経済成長期には、自動車やビル建設の需要が拡大し、鉄のリサイクル技術も飛躍的に向上しました。

  • 戦時中(1937〜1945年):
    • 国家総動員法(1938年)により「金属供出令」が発令
    • 寺の鐘や家庭の鍋・釜まで供出し、軍需用に再利用
  • 戦後復興(1950〜60年代)
    • 鉄スクラップの再利用が重要となり、製鉄業が発展
  • 高度経済成長期(1960〜80年代)
    • 自動車、家電、建築業が急成長し、大量の金属スクラップが発生
    • スクラップ市場が活性化し、全国に金属回収業者が増加

Social Bridgeが事業を行っている神戸市では、神戸製鋼所(KOBELCO)が1911年に設立され、その後神戸の製鉄業の中心的存在となりました。当時、神戸港の近くには製鉄や金属加工の企業が集まり、鉄鋼業を中心とした産業クラスターが形成されていました。また、戦後の復興期には、鉄鋼需要が高まり、神戸を含む阪神工業地帯では、鉄鋼業や造船業が発展しました。特に神戸の臨海部には、原料の輸入と製品の輸出に適した立地を活かし、鉄鋼関連の工場や物流施設が集まっていました。

4. 平成〜令和(1989年〜現在)

現在、日本は世界でもトップクラスの金属リサイクル率を誇ります。特に鉄スクラップは国内でのリサイクル率が90%以上と高く、製鉄所では電炉を活用した環境負荷の少ないリサイクル製鋼が行われています。また、最新の技術によってAIやロボットが金属を選別するシステムも導入され、より効率的なリサイクルが可能になりました。

  • 1991年「資源有効利用促進法」制定 により、企業のリサイクル義務化
  • 2001年「家電リサイクル法」施行 、冷蔵庫・洗濯機・エアコンのリサイクル義務化
  • 2013年:「小型家電リサイクル法」 → スマホ・PCのレアメタル回収促進
  • 現在、カーボンニュートラルに向け、鉄鋼業界が「CO2排出削減型リサイクル」に注力

現在の神戸市をみてみると、1990年代以降、環境対策や経済の変化により、神戸市内の大規模な製鉄工場は縮小・撤退し、兵庫県内の他の地域(加古川市の加古川製鉄所など)に移転しています。代わりに、現在の神戸には、鉄鋼リサイクル業や金属加工、鉄鋼関連の技術

開発を行う企業が多く集積しています。

Social Bridgeによる神戸での取り組み

江戸時代から金属リサイクルの歴史を持つ日本では、現在も積極的に金属リサイクルが取り組まれています。

  • 主なリサイクル対象金属
    • 鉄鋼(スクラップ):建設廃材、自動車、家電、産業廃棄物から回収
    • 非鉄金属:
      • アルミ:飲料缶、自動車部品
      • 銅:電線、配管
      • レアメタル:電子機器(スマホ・PC)、自動車のバッテリー
  • 回収・再利用の流れ
    • 消費者・事業者による排出
      • 家庭:家電リサイクル法、資源ゴミ回収
      • 企業・工場:産業廃棄物として処理
    • 回収業者・スクラップ業者による解体・分別・圧縮
    • 製錬・精錬工場において、不純物を取り除き、新たな金属製品に再生
    • 再製品化(新しい鉄鋼製品、アルミ製品、電子部品など)

Social Bridgeでは、このリサイクルループのうち「排出された金属を回収」する役割を担っています。Social Bridgeが回収した金属は、大きさや種類によって選別されます。その後、製鋼メーカーが原料として使いやすいように切断、圧縮等の加工がなされ、製鋼原料として製鋼メーカーにて使用されます。

  • Social Bridgeで取り扱っている金属(実際の持ち込み品から)

資源循環の優等生「鉄」

図1 日本の鉄鋼循環図(2022年度) 出所)日本鉄鋼連盟

これまでお話ししてきた金属のうち、実は「鉄」が数ある資源の中でも最もリサイクルに適している「リサイクル優等生」なのです。上記の「鉄鋼循環図」で示されているよう、鉄鉱石などの天然資源から製造された鉄は、一度製品化され使用し廃棄された後でも、スクラップとなり再度新しい製品の鉄鋼の一部として生まれ変わります。

表1 自立的・持続的なリサイクルに必要な条件と鉄の特徴

#自立的・持続的なリサイクルに必要な条件鉄の特徴
1分別・選別の容易さ鉄鋼は磁性を持っており、磁力選別で他の素材と簡単に分けることができ、シュレッダーダストや焼却灰からも回収可能
2再生利用の負荷の低さ鉄鋼は少ないエネルギーと環境負荷で再生可能であり、天然資源から製造するよりも環境に優しい
3経済合理性の高いリサイクルシステム
日本を含む多くの国で、鉄鋼スクラップを効率的に回収・リサイクルする仕組みが整っており、結果回収〜再資源化までの経済合理性が高い水準で保たれている
4多様な製品への再生可能性鉄鋼はリサイクル後も多様な製品に再生可能で、再加工によって新たな特性を持つ製品が作り出せる
5材料品質の低下が少ない:鉄鋼は不純物を簡単に除去でき、品質の低下を抑えながら無限にリサイクルが可能
出所)Social Bridge作成

リサイクル材の多くは、新たに採掘された天然資源を使用して作られた素材(バージン材)と比べ品質劣化が著しいため、リサイクル前と同様の製品では使用することができず、より低品質でも適用可能なものへリサイクル材が用いられることがしばしばです。一方で鉄は、品質がリサイクル前後でほとんど低下しないため、無限のリサイクルを可能としています。

このようにリサイクルされた鉄は、わたしたちの生活のいたるところに存在しています。以下に、リサイクルされた鉄が使用されているものを一部ご紹介します。

  1. 建築資材(鉄筋・鉄骨)
    • 建設業界では、大量の鉄スクラップがリサイクルされ、鉄筋やH型鋼に生まれ変わる(高層ビル、橋、トンネル、マンションなど)
    •  東京スカイツリーや新国立競技場にもリサイクル鉄が使われている
  2. 自動車(ボディ・エンジン部品)
    • 廃車になった車の鉄スクラップは溶かされ、新しい車のフレームやエンジン部品に。
    • 新車の約40%がリサイクル鉄から作られており、日本の廃車リサイクル率は95%以上
  3. 鉄道レール・電車の車体
    • 鉄道のレールや電車の車体にもリサイクル鉄を活用
    • 日本の鉄道レールは30〜40年ごとに交換されている。その後、再び鉄道レールに生まれ変わることもしばしば。
  4. 飲料缶(スチール缶)
  • 使い終わった缶のスチール缶(コーヒー缶など)は、リサイクル後に再び缶として使われることが多い。
  • スチール缶のリサイクル率は約90%

実は知らないところでリサイクル材に支えられているわたしたちの生活。江戸時代から続く資源循環の文化を、Social Bridgeと共にまた一歩アップデートしていきませんか?