日本におけるサーキュラーエコノミーとSocial Bridgeのアプローチ1
サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミーは、大量生産・大量消費を前提し、資源の循環利用を想定しない線形経済とは対照的に、材料と製品を循環させ、資源のより有効な利用につなげる経済システムです。 プロセスや製品そのものをデザインすることで、バリューチェーンの無駄を排除し、新たな価値を創造します。サーキュラーエコノミーの概念を適用すると、材料の使用量を削減し、資源の消費が少なくなるように材料や製品を再設計し、新しい材料や製品を製造するための資源として廃棄物を回収することができます。
日本の現状
概要
2021年日本のエネルギー自給率は13.3%であり、OECD加盟国38カ国中37位でした。このような低いエネルギー自給率は、主に以下の要因によって発生します。
- 国内資源の不足による化石燃料への海外依存度の高さ
- オイル: 99.7%
- 石炭: 99.7%
- 天然ガス:97.8%
- 原子力発電所の停止:東日本大震災後、日本の原子力発電所は運転を停止し、エネルギー自給率は大幅に低下
- 再生可能エネルギー導入の限界:太陽光や風力などの再生可能エネルギーは導入が進んでいるものの、未だ開発途上であり、国内のエネルギー生産量は東日本大震災前と同水準には達しておらず
日本は、資源自給率が低いために、世界最高の資源購買力を維持してきました。しかし、新興国の成長により、今後海外から化石燃料を調達できなくなることが予想されます。これは、新興国のみが資源調達力を高めているだけでなく、新興国における資源需要が増大しており、それが商品価格を押し上げていることを意味しています。現在の世界の政治情勢を考慮すると、天然資源は外交手段や保護主義の手段としても利用され、資源産出国が輸出を制限する可能性があります。そのため、日本にとって海外資源への依存を減らすことが急務の課題であり、サーキュラーエコノミーはこの状況に対処するための最も効率的なアプローチの 1つであると考えられています。
日本政府による政策
こうした状況に対処するため、日本政府は様々な政策を打ち出しています。 日本は、再生可能資源を大量に海外輸出している現状もあり、日本におけるサーキュラーエコノミーの発展は他国の環境負荷を低減することへも繋がります。経済成長と環境保全を両立させるため、日本では次のような取り組みが行われています。
- 循環経済ビジョン2020
経済産業省が2020年5月に策定した、サーキュラーエコノミーへの移行を加速するための重要なガイドラインです。その主な機能は次のとおりです。
- 資源循環:製品の長寿命化、リユース、リサイクルの推進
- ビジネスモデルの変革: 所有から共有へ
- デジタル技術の活用:IoTやAIを活用した効率的なリソース管理
- プラスチック資源循環戦略
プラスチック廃棄物問題に特化して2019年に策定された。
- リデュース:使い捨てプラスチックの削減
- リユース・リサイクル:プラスチック製品の再利用・リサイクルの推進
- 代替素材の開発:生分解性プラスチックなどの環境配慮型素材の研究開発
- 循環型社会形成推進基本計画
この計画は、循環型社会の形成に向けた総合的な施策を定めたものです。
- 廃棄物の3R:リデュース、リユース、リサイクルの推進
- 適切な処理の確保:廃棄物の適切な処理と管理
- 地域循環共生圏の形成:地域資源を活用した自立・分散型社会の構築
参照: https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r06/html/hj24010204.html#n1_2_4
海外諸国の動向
日本の状況をより深く理解するために、世界で最も先進的な取り組みを行っているEUと比較してみます。
表1 EUと日本におけるサーキュラーエコノミーに関する動向
EU | 日本 | |
政策アプローチ | CE パッケージ (2015) : 経済的サポート:2030 年の具体的な目標: 例:包装廃棄物の75%をリサイクルする優先分野: プラスチック、食品廃棄物、重要な原材料、建設および解体、バイオマスおよびバイオベース製品推定される経済的利益:EU内の企業が6,000億ユーロを節約 58万人の雇用を創出CE 行動計画 (2020):欧州グリーンディールの一環として、よりクリーンでより競争力のある欧州の構築を目指す。主な機能は次のとおり。持続可能な製品政策の枠組みエレクトロニクスとICT、電池と自動車、パッケージングなどの主要製品バリューチェーンに焦点を当てる廃棄物削減の取り組み横断的なアクション | 循環経済ビジョン2020:経済活動としてのサーキュラーエコノミーへの移行を目指す |
規制の枠組み | より厳格な規制が実施される。(例:プラスチック製品を規制し、製品のリサイクル可能性に関する基準を設定) | 企業の自主的な取り組みを重視したソフトロー |
民間部門の取り組み | 製品設計段階からリサイクル・リユースを考慮した、より積極的なサーキュラーエコノミーモデルを採用ESG投資の観点からサーキュラーエコノミーへの取り組みを強化 | 幹線産業:環境に配慮した設計とサービティゼーション(リース、シェアリング等)による新たな市場の創造。静脈産業:リサイクル産業から資源産業への転換を目指す |
国際標準化 | 両国は ISO/TC323 におけるサーキュラーエコノミーの標準化に参加しているが、EU がより主導的な役割を果たしている | |
消費者の役割 | 消費者の権利と責任がより明確に定義「修理する権利」などの概念の導入 | 環境への影響が少ない製品を購入し、廃棄物を最小限に抑えるよう奨励 |
日本と EU はともにサーキュラーエコノミーへの移行を目指していますが、EU はより規制主導のアプローチであるのに対し、日本は企業の自主性を最大限に高めるアプローチを採っています。他方、経済成長と環境保護の両立という目標においては、両国が一致しいる点として挙げられます。
参照: https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sankyo_gijuku/resource_circulation/pdf/001_05_00.pdf