日本のサーキュラーエコノミー分野におけるスタアートアップエコシステム

サーキュラーエコノミーの構成要素

サーキュラーエコノミーの仕組み 出典)エネルギー庁、成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?(2024年11月)

大量生産・大量消費・大量廃棄の一方通行である「線形経済」対し、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という経済システムが広がりつつあります。「サーキュラーエコノミー」は、市場のライフサイクル全体で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じ、付加価値の最大化を図ります。さらに、日本国内では資源循環を推進する経済政策により、国際的な資源供給の途絶リスクを可能な限りコントロールし、国内の資源循環システムの自律化・強靱化を図りながら、 国際競争力の獲得を通じて持続的かつ着実な成長を実現する「資源自立経済」を目指しています。

日本のスタートアップエコシステム

日本におけるサーキュラーエコノミー分野のスタートアップエコシステムは、急速に発展しています。起業家、投資家、企業、政府、教育機関が一体となり、資源の効率的な利用と環境負荷の軽減を目指して、持続可能なビジネスモデルが形成されています。環境問題への関心の高まりや政府の政策支援、企業の社会的責任(CSR)への注目などを背景に、多くのスタートアップも新しいビジネスモデルを提案しています。

スタートアップエコシステムの構成要因  出典)Social Bridge作成

スタートアップエコシステムの構成要員として、以下が挙げられます。

  1. 企業:スタートアップ、大企業
    • スタートアップ:日本では、サーキュラーエコノミー分野で多くの革新的なスタートアップが登場している。これらの企業は、資源の効率的な利用や廃棄物削減、再利用を促進する製品やサービスを提供している。主な分野としては、リサイクル、エネルギーの効率化、プラスチック廃棄物の削減、製品のリペアやリースなどが挙げられる。
    • 企業:大企業では、サーキュラーエコノミーの実現に向けてスタートアップと協力し、新しいビジネスモデルの導入や技術革新を進めている。特に、製品のリサイクル、サステナブルな製造プロセス、エネルギー効率化に関連する分野では、大手企業とスタートアップのコラボレーションが進んでいる。
  2. 投資家・金融機関:
    • 日本のサーキュラーエコノミー分野では、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が積極的に支援を行っている。また、金融機関によるインパクトファイナンスも欧州に追随するかたちで発展しつつある。
  3. 行政:
  4. インキュベーター・アクセラレーター:
    • サーキュラーエコノミーのスタートアップ支援を行うインキュベーターやアクセラレーターも増えてきている。これらの組織は、企業に対してメンタリング、ネットワーキング、資金調達支援を提供し、スタートアップが成長できる環境を整えている。
  5. コミュニティ:
    • 日本には、サーキュラーエコノミー分野の企業家や専門家が集まるネットワーキングイベントやコミュニティがある。これらの場では、アイデア交換やコラボレーションの機会が生まれ、スタートアップが成長するためのリソースや知見が共有されている。
  6. 大学:
    • サーキュラーエコノミーに関する知識やスキルを提供するための教育プログラムやワークショップが増えており、これにより次世代の起業家やビジネスリーダーが育成されている。

うち、企業各社では、サーキュラーエコノミーの各領域において様々な取り組みが行われています。

図3  サーキュラーエコノミーに取り組む日本企業 出典)Social Bridge作成
  1. リサイクル:廃棄物を回収し、それを新たな資源として再利用する
    • マテリアルリサイクル:
      • 物理的な手法を使用して廃棄物を処理し、元の形状に戻す方法。材料を破砕、洗浄、圧縮、または再構成して、再生可能な素材として再利用。この方法は、比較的簡単でコスト効率が良いですが、素材によっては品質が劣化することがあり。
      • 対象となる素材: プラスチック、金属、紙、ガラスなど
      • 例: ペットボトルを砕いて再生プラスチックとして使用、アルミ缶を圧縮して再利用する、古紙を再加工して新しい紙製品へ転換
      • 企業例:パナソニック、リコー、旭化成、ファーストリテイリング、esa、リマーレ
    • ケミカルリサイクル:
      • 化学反応を利用して廃棄物を元の材料や化学物質に戻す方法。特に複雑なプラスチックや混合物をリサイクルする際に利用され、素材の質が維持されるため、機械的リサイクルよりも高品質な再生品を得ることが可能。
      • 対象となる素材: プラスチック(特に複雑なプラスチック)、化学製品
      • 例: PETボトルを化学的に分解して新たなプラスチック原料を製造、プラスチックをモノマーに分解して新しい製品に転換
      • 企業例:JEPLAN、出光興産、凸版印刷、アールプラスジャパン
    • バイオリサイクル :
      • 有機廃棄物を微生物や酵素などのバイオプロセスを用いて分解し、新しい有機物やエネルギー(例えばバイオガス)を生み出す方法。特に食品廃棄物や農業廃棄物などに適用される。
      • 対象となる素材: 食品廃棄物、農業廃棄物、木材チップ、紙
      • 例: 食品廃棄物を堆肥化して肥料として利用する、農業残渣をバイオガスとしてエネルギーに変換
      • 企業例:Jバイオフードリサイクル、三井化学、タケエイグリーンリサイクル、コベック
    • アップサイクル:
      • 廃棄物や不要な製品を新たに価値のあるものに変えるプロセス。これにより、元の製品や素材の価値を高めることが可能に。
      • 対象となる素材: 古着、木材、金属、ガラス、紙など
      • 例: 古いデニムを使って新しいバッグやアクセサリーを作る、廃材を使って家具やアート作品を作る
      • 企業例: fabula, ファーメンステーション
    • トレーサビリティ
      • 製品のライフサイクルを追跡できる仕組みを構築することで、より効率的なリサイクルの実現や高品質なリサイクル材の調達を推進。
      • 例:製品にQRコードをつけて、リサイクルが可能な素材やリサイクル方法を消費者が把握できるようにする)。
      • 企業例:digglue、レコテック、アミタホールディングス、NTTデータ
  2. リデュース:資源の消費量を減らし、無駄な廃棄物の発生を抑える
    • 商品設計の見直し
      • モジュール化:
        • 部品が交換可能であることや、製品を解体して再利用できる構造にすることも重要です。
      • エネルギー効率化:
        • 生産プロセスでエネルギーを効率的に使用し、環境への負荷を最小限に抑えることが求められます。また、製品のライフサイクル全体にわたって省エネルギーを意識した設計が推奨されます。
    • 新素材の活用を通したバージン材使用量の削減:
      • バイオベース素材(バイオマス素材)
        • バイオベース素材は、再生可能な植物由来の原料から作られる素材で、石油由来のプラスチックや化学物質を代替することができます。これらの素材は、サステナビリティの観点から非常に注目されています。生分解性がある場合も多いため、最終的に環境負荷を低減できる可能性があります。
        • 例:PLA(ポリ乳酸)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、バイオプラスチック
        • 企業例:バイオマスレジンホールディングス、東レ、三菱ケミカル、カネカ
      • セルロース系素材
        • セルロースは植物の細胞壁に存在する主要な成分で、非常に豊富で再生可能な資源です。セルロースから作られた素材は、紙や繊維、フィルムなどに利用され、サーキュラーエコノミーにおいて重要な役割を果たしています。
        • 例:セルロースナノファイバー(CNF)、ヴェリタ・セルロース
        • 企業例:日本製紙、大王製紙、王子ホールディングス、中越パルプ工業
  3. リユース/シェア:品や部品をそのまま再利用し、新たに製品を作ることなく、物を繰り返し使用することに注力
    • プロダクト・アズ・ア・サービス(PaaS):
      • 所有するのではなく、必要な時だけ使用するという考え方です。製品を購入するのではなく、企業が提供する製品を「サービス」として使用する形態で、製品が不要になった際に回収されて再利用されます
      • 例:カーシェアリング、シェアハウス・コワーキングスペース、モノのシェアリング(貸し借り)
      • 企業例:Uber, NearMe, Airbnb, ADDress, Sanu、 wework、カマン、クラス、ソーシャルインテリア
    • リファービッシュ
      • 初期不良などが原因でメーカーに返品になった商品を、メーカーの修理や調整により新品に準じた状態で再販
      • 例:中古品や再生品を取り扱うオンラインマーケットプレイス、スマートフォンやコンピュータ機器のリファービッシュサービス
      • 企業例:Back Market
  4. リペア:製品の故障部分や不具合を修理して再使用できるようにすること

Social Bridgeでは、「資源循環の文化を創る」というビジョンのもと、廃棄物の回収・再資源化をすることで、リサイクルやリデュースを通したサーキュラーエコノミーを推進してます。なかでも、古紙に特化した再生資源卸売業を主力事業の一つとして、サーキュラーエコノミー分野における持続可能なモデルの構築を実践しています。2024年にスタートした「WAKERU」プロジェクトは、資源と廃棄物の分別による新たな資源循環文化の形成を目指します。